地球と両思い。よろこびの人生を生きる【1】~みつゆきさんインタビュー~

未来創造コミュニティ

素朴で繊細な音色に、なつかしさやゆとりを感じる楽器「アイリッシュハープ」。ケルト地方で古くから親しまれてきた民族楽器です。

その音に魅了され、アイリッシュハープ演奏の第一人者として知られるのが、今回ご紹介するみつゆきさん。
幼少の頃から生きにくさを感じ、「自分はどう生きたいのか」を模索し続けたみつゆきさんがアイリッシュハープと出合い、どんどん本来の自分を取り戻してこられたのですが、その原点には日本の縄文文化がありました。
みつゆきさんのこれまでの軌跡と気づきから得たもの、そして、いまを生きる私たちへのメッセージをお届けいたします。


アイリッシュハープ奏者 みつゆきさん ~profile~
オリジナル曲を中心に活動するアイリッシュハープ奏者の第一人者。 その独自の感性でつむぎだされたメロディーは、素朴でかつ繊細。 聴く人の心の奥深くに染み入り、どこかなつかしい気持ちにさせて くれる。胎教音楽やリラクゼーションの音楽としても愛されており、 ホームコンサート、保育園や学校、病院、介護施設、ギャラリー、 能楽堂、寺院、経営者の交流会など、その演奏活動範囲は多岐 に渡る。


自分の本質と繋がる縄文、そしてアイリッシュハープとの出会い

生きづらさを感じていた学生時代

-「アイリッシュハープで自分を知り、輝いて生きる」ことをテーマに全国で活動中のみつゆきさん。アイリッシュハープに出合うまで、たくさんの苦悩や挫折があったとうかがいました。

みつゆきさん:
物心がつく前、まだ2~3歳の頃、何が原因だったのかは覚えていないのですが、精神的ショックを受け、完全に委縮してしまいまして。
幼少期のその体験が傷となり、それ以来、自分を表現することができなくなったのです。

つねに委縮しているから、小・中学校ではいじめの対象となり、勉強にも違和感を感じてしまい授業が苦痛でした。
高校生になったらいじめもなくなり少し安心でいられましたが、本当の自分ではなくそれなりに生きていた感じです。
高校卒業後は、とりあえず世の中の流れに乗って大学に入りました。

-そうだったのですね。大学では何か変化はありましたか?

みつゆきさん:
高校のときはそれなりに人と喋っていたのですが、大学に入ったら、また話せなくなってしまいまして。

幼少期に受けたショックや、何をしてもうまくいかないこと、人とうまく話せないことなどがコンプレックスとなり、完全に自信をなくしてしまった。対人恐怖症になってしまったのですよ。

また、大学に入ってはっきりしたことが「何かをしたいけれど、それが何なのかがわからない」ということでした。人とも話せないし、大学の図書館でずっと本を読んでいましたね。

そのとき感じていたことは「自分のベースがない」ということでした。
それで、自分のルーツや戦後途絶えてしまった日本人のルーツを知りたくなり、縄文の本へとたどり着きました。

ちょうどバブル経済後期で、何をしても楽しいような、世間は浮き足立っていた時代でしたが、僕は毎日がとても生きづらかったので、縄文時代の精神性や生き方を知った時は、とても興味が湧きました。

自分らしく生きることを追求したら、縄文に行き着いた

-今から30年も前に注目しておられたのですね。縄文時代のどんなところに惹かれたのですか。

みつゆきさん:
長く、1万年以上も平和が続いた縄文時代は、自給自足の生活の中、皆が得意なことをして皆で助け合って暮らしていたことを知りまして。現代のような貧富の差や大きな争いもなく、皆が穏やかに補い合いながら生きていた。

ある遺跡から、小児麻痺の人の骨が見つかったというニュースを見たことがあるんです。
調査の結果、寝たきりの小児麻痺の子どもを成人まで皆で介護していたことがわかった、ということでした。

助け合い、
守り合ってきたのが縄文なんだ!
優劣はなく、

すべての人を敬って
その人がその人らしく生きていたんだ!

と、本当に感動しました。

-縄文時代は、みつゆきさんが当時、一番求めている世界だったのですね。

みつゆきさん:
そうなんですよ。対人恐怖症で人と話せず完全に自分に自信をなくしている状態でしたから。

自分がとても生きづらかったので、まるで新鮮な空気を求めるように、縄文時代の“互いに助け合って生きる心豊かな暮らし”に強烈な憧れを感じたのです。

そんな僕の状態とは正反対に、世間はバブルの時代である意味浮かれていましたが、そんな世の中の状態に馴染めなかった僕は普通の当たり前の人の暮らしに触れたいと思い、アジア、タイとマレーシアに行ってマレー半島を自転車で横断しました。あと、北海道も自転車で一周しました。

対人恐怖症が和らぎ、癒される体験

-そうなのですか!マレー半島横断に広大な北海道一周の自転車旅!すごいですね!ご自身の中で何か変化はありましたか?

みつゆきさん:
まだ若かったですし、きっとエネルギーを持て余していたのでしょうね。
たくましく生きているアジアの人たちの生活に触れたことは僕の心の支えになりました。

また、北海道を一周した後、さらに青森から当時住んでいた大阪まで自転車で帰ってきたのですが、そのときの体験が、対人恐怖症でガチガチだった僕を少しゆるめてくれました。

夜、空き地にテントを張って寝るのですが、そのときに何も言わずに張ると怪しいので近隣の人に許可をいただきにいくと「もう、それなら家に泊っていったらいいよ」と。
「ご飯も食べていきなよ」と、どんな人かもわからない旅人相手に。

北海道や東北の人の、自分と他人の区別なく受け容れてくださる感覚に、とても癒されましてね
対人恐怖症が少し和らぎました。

-素敵なエピソードですね。対人恐怖症だったのが、そういう温かい出会いがあり、心がゆるんできたのですね。

みつゆきさん:
そうなんです。とても貴重な旅でした。

対人恐怖症という貴重な体験をし、自分に自信をなくしたけれど、そこからも癒されていく。
ドン底まで落ちたことで、このような貴重な体験ができたんだろうなと思っています。

大学卒業後は造園業の職につきました。
普通にサラリーマンになっていたら気がおかしくなりそうだし、なるべく人と喋らなくてもいいかなと思いまして(笑)。

とにかく、その頃は自分と繋がりたかったのです。本当に自分がしたいことを求めていました

人生を変えたアイリッシュハープとの出合い

-造園の仕事はどうでしたか?何かが見つかりましたか?

みつゆきさん:
もくもくと作業ができる環境で良かったのですが、何の知識もなく造園の仕事に入ったので、ひたすら怒られましたね、揉まれました(笑)。

そんな日々の中、ある日、家の有線放送からアイルランドの伝統音楽、アイリッシュハープの音が流れてきたのですが、聴いた瞬間、涙が溢れて止まらなくなりまして。すごく癒されたのです。

この音を聴いたとき、まったく思考することができなくなり、ただただ涙を流しながらアイリッシュハープの音を聴いていました。24歳の頃です。

-無の状態になられたのですね。

みつゆきさん:
はい。何をしたら自分は癒されるんだろうとずーっと探していましたが、アイリッシュハープにむくむくと興味が湧いてきまして。

当時はインターネットもまだありませんでしたから、文献を探すなどして調べ、教室を見つけて通いました。

-ハープと聞くと、オーケストラでも使われるグランドハープが浮かびますが、みつゆきさんが魅了されたアイリッシュハープとはどんな楽器なのでしょうか。

みつゆきさん:
ハープの起源は「弓」なのです。
古代メソポタミア文明の壁画などにその様子が描かれていて、そのハープがいまでも残っているのがアイルランドやスコットランドだそうです。

改良を重ねて発展していったのがグランドハープです。オーケストラ等で他の楽器と共演するために圧をかけてしっかりと音を届ける弾き方をします。

一方、アイリッシュハープは昔からの想いのまま、いま目の前にいる大事な人へ想いを伝えるために奏でる楽器
語り部の伴奏としても使われていたそうです。

主張せず、ただ流れている――語りを通して自分が主人公になり、お話の世界に入っていったり、あるときはこれでテーマ曲を弾いたり、海などの自然を表現したり。

-すごいですね!人生を奏でる、という感じがしました。

みつゆきさん:
アイリッシュハープは、昔から楽器としてだけではなく、音で人の病を治してきたことが文献に数多く残されているんですよ。

アイリッシュハープの音、そしてそこから発する振動が僕たち人間を癒してくれていたのですね。

-音楽療法ですね。アイリッシュハープの音の振動が自分の振動と共鳴し、本来の周波数にととのえることで、体が本来の健康な状態へと戻っていくのでしょうか。

みつゆきさん:
そうですね。
ただ、その音を聴いているだけで体も心もととのい、本来の自分の姿へと戻るのだと思います。

僕は、24歳でアイリッシュハープを聴いて感動し、26歳から自分でも弾き始めました。

弾けるようになったら弾いてほしいと頼まれ、もっと練習がしたくなり、時間の融通がきく職場に転職し、可能な限りの時間を使ってひたすらアイリッシュハープの練習をしました。

ただただ、自分を取り戻す、赤ちゃんや幼少期のときに持っていた感覚を取り戻す、

そのためだけに弾いていましたね。

【2】に続く

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